南大沢の「MAY.Delica&Bar」がオープンして2週間が経った。
思えば、8月から12月までの4カ月間、息継ぎ無しで現場をこなしてきたようだった。 ついこの間、唐突に迎えた誕生日。 ここから40歳までの一年間で僕は一人前のロックンローラーになれるのだろうか?…… 「海老名 hair siena」から「2nd shop pre-hub」をヤッつけて、11月、2,3に ある「go green market」と同月9,10にある「東京蚤の市」の準備でバタバタしていた 10月の半ば、一組のカップルが当店ガレージでタイルのシートを見ていた。 ひとカケラのタイルピースならまだしも、タイルのシートを見る一組のカップルがそこに いるなら、彼らはただ物見遊山でタイルシートを手に取り、何やらと物々しい当店をねり 歩いているワケではないことは経験上解かる。 「キッチンか何かのリノベーションですか?」 「いや、カフェを開業するんです。」 水面のウキがピクッと一瞬沈んだ。 「場所は何処ですか?」 「南大沢です。」 「いつ頃、オープン予定ですか?」 「11月の半ばにはオープンしたいんです。」 「じゃあ、もう施行は始まっているんですね。」 「いや、一週間後から始まる予定なんですが……。」 どうやら、彼らと施行業者とのコミュニケーションはうまく交わされておらず、彼らの中に 多少の不安らしきものが窺われた。 もはや、ウキは水面を激しく上下していた。 「○○くんの紹介でここへ来たんです。」 知り合いの○○の名前を聞いて僕もフランクになり、お互いの距離はいっき縮まった。 「そうなんだー。じゃあ、何か手伝えることがあれば言って」 「色々あるんですが、玄関扉やファサード自体が無いんですけどそういった制作は 行っているのですか?」 「デザインと規模次第だけど物件は何坪くらいあるの?」 「60坪です。」 喰らいついた魚は想像以上に大物だった。見たとこ30歳前後の彼らが開業するであろう カフェの規模は大きくても25坪かそこらだと思っていた。60坪の店舗制作に関わる、 技量も時間も僕は持ち合わせていなかった。 僕はそーと竿を置いてテトラポッドの下手なデッサンでもやっている方が似つかわしかった。 「そ、そうなんだ。ワリと大きな店舗なんだね。」 「友達に施工業者がいるんですけど、なかなか話が進まなくて……。」 施行や什器、家具に至るもろもろの予算を何となく尋ねてみると60坪の店舗を作る予算 にしてはあまりにも低いものだった。いよいよ、僕は後ずさりをしながらスケッチブック でも探そうと先ほど縮めた互いの距離をやんわり広げようとした。 いろんな意味で関わってはいけなそうであった。 奥さんは小柄で華やかな顔をした女性でカフェでの勤務経験があり、なんでも独創的な料理 感覚の持ち主であると隣にそびえ立つ長身で優しい表情の旦那が保証していた。旦那は 小学校の教師をやっていてその前は10年の厨房経験のある料理人であると奥さんは 言った。絵に描いたような美人美男の前途有望な夫婦。 どうやら、彼らは後半はほぼフェードアウト気味にただ頷いていただけの僕に好感を持ってくれたようで内装の構想を語りだしたりした。 しかし、聞いていると何だかおかしい、提示している席数や厨房の規模から考えても60坪の 広さには聞こえない。 「はじめはボチボチやっていこうかと…」 60坪の店舗を開業する人間が「ボチボチ」やるなんて言ってられるであろうか? 60坪の店舗を運営するにはそれなりに確信的な内容と緻密に計画されたマーケティング、 そしてある程度見込まれた結果が計算できてないといけない。 「もしかして…、店舗の大きさは60坪ではなくて60平米じゃないですか?」 …………………………………………。 というわけで南大沢の物件を訪れてみました。 緑も多いい南大沢の団地群の真ん中に広場があり、そこを囲むように団地一階部が店舗が 並び商店街となっている。数年前に大きなスーパーが撤退し、商店街の半分くらいの店舗 はシャッターが閉まっているが、まだ床屋さん、歯医者さん、おそば屋さんなどは健在で なかなか昭和的な懐かしさが漂うその一角に今年の3月にチクテベーカリーさんがオープン。 「私自身ここで育って、どんどん淋しくなっていく商店街でチクテさんがオープンされて、 私もここでガンバローと思って……。」 元お寿司屋さんのその店舗はすっかりスケルトン状態になっていて、ファサード壁はとっぱ われている。壁も天井も床もコンクリの状態だがかなりズタズタな状態であった。入口から 手前、空間の三分の二のフロアの天井は2メートル50㎝くらいでワリと低めなのだが、奥の フロア部はそこから天井が立ち上がり4メートル以上ある。 僕はその店舗の立地といい、状態といいかなり好感が持てた。 「あのー、施行業者の友達に富岡さんのことを話したら『全部その人に任せてればいい、 俺は手をひく』って言われたんですけど、それでいいですか?」 「え゛ー、ホント?、あれっ、え゛、全部って…」 結局、プランナーとして、僕が施行内容をプランし、彼らに施行してもらうはずが、全フリ されたワケで、大きなイベント2つも抱えていて、一か月もない状況であったが、引くにも 引けず請け負ったのでありました。 角パイプ鋼材をサッシに使用、大きくガラス窓部をとり、センターに窓の無い2メートル以上 ある扉を設置。サッシ部をスモーキーなパープルピンクに塗装、窓の下部は青みのある ペールグリーンの古波板のパッチワーク。 荒れたコンクリの床はあえてその質感をそのままにし、シーラーでコーティング。退廃かつ 冷めた床に大きな中近東のラグ。いつかこれがやりたかった! 2400X1200というサイズ(12人席)の古材を使ったパッチワークテーブル制作。 その周りにはポーランド、チェコ、アメリカ、日本の味のある椅子が並ぶ。 厨房を囲むパーテーション、カウンター、ガレージはブルーグレーの波板やアルミの足場板で 制作。天井を這いながら枝分けれする見事な電線さばきは電気屋の小泉さんの技、中継に 大きなヒートンをパープルピンクに塗装し、電線を錆びた番線で結束。「観せる配線」の 珍妙なコンセプトにお付き合いしてもらいました。 その他モロモロ、おもしろ可笑しくやらしてもらいました。 アヤちゃん(奥さん)の作る料理も独創的で盛り付けも華やかで美味しく。ビールやワインに 合いそうな素敵な料理でした。 あっと、そんな中、「Go Green Market」、「東京蚤の市」もちゃんと殺ってきました。 上「GGM」下「東蚤」 いつのまにかに暮れです。
by interestingman
| 2013-12-14 17:11
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