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ナポレオン・ダイナマイト
以前、記述したことだが僕は映画好きである。
こうも日々雨に降られてしまうと映画鑑賞の方にも
精がでる。

最近では家の近くにあるレンタル店にも観るべき作品が
なくなってしまい、見落としの映画を探す為、陳列棚に
並ぶdvdを隈なくチェックする。
カテゴリー別に置かれているようだが、店の判断違いで
間違ったカテゴリーに置かれた作品などを発見することがしばしある。
どうでもいい作品などはそのまま放っておくが、名作ともなると
僕も我慢ならない。
救出し、正しいカテゴリーの場所に置く。
また、名作が最下列などに置かれているとちょうどいい目線の
場所に置く、平置きになっている駄作をたて置きに直し、先の
名作を平置きにする。
本当ならば店のスタッフがやるべき仕事であろうが、無能な彼らは
返却ソフトを小脇に抱え、カバー探しにウロウロしている。

「あっちの棚の3段目っすよ。」

僕は大体の作品が何処にあるくらい把握している。

これまで僕が通った数々のレンタル店において僕が必ず行う、
レジスタンスがある。
この腐敗し、作品のカテゴライズすらロクにできやしないレンタルビデオ界に
ささやかに行う僕の反乱行為。

それはシルベスター・スタローンの「ランボー」をアクションコーナーから
ドラマコーナーに移す事だ。

「ランボー」は現在では戦争アクション映画の代表作として世の中では知られている。
しかし、1作目の「ランボー」はアクション性よりかはるかにドラマ性の強い作品
だと僕は評価している。
たしかに2作目以降はアクション性重視に制作され、それはそれなりに大した作品で
僕もそのように評価しているが、1作目は別物なのだ。
どのへんが高いドラマ性なのかはつべこべ書くきはないが僕はそう断言できる。

僕は2作目以降の3作品をアクションコーナーに残し、1作目「ランボー」だけを
ドラマコーナーへと救出する。

レンタルビデオ界もどうしょーもないが、さらにどうしょーもないのは配給会社だ。
度々、彼らが制作したであろうカバーデザインや邦題には残念な気持ちになる。

挙げれば切りがないが、数々の優れた作品が配給会社の手によってその本質とは
かけ離れたかたちに歪められ、観賞者の手に渡らなかったことだろう。

カバーデザインの例でいえばアトム・エゴヤンの「エキゾチカ」なんか僕にとって
忘れられない酷さだった。
1997年「スウィートヒアアフター」でカンヌ国際映画祭の審査員特別賞を獲得した
カナダ出身の監督、アトム・エゴヤン。今では珍しくない技法だが時系列を無視した
独特のカット・アップのストーリーテーリングで以外な真実に結びつける手法は
その3年前に発表した「エキゾチカ」で完全に完成していた。

がこの優れた作品を配給会社はスクールガールのコスプレをしたストリッパーがさも
これからいやらしい行為を行うみたいな写真をカバーデザインに使用し、見どころ満載の
エロティック・サスペンス的なアプローチでパッケージデザインを制作した。

酷い、ひどすぎる。

マイク・リーの名作「ネイキッド」なども同じような類の被害をうけている。

また、残念な邦題を付けられた名作は何といっても2004年にアメリカで公開
されたジャレッド・ヘスの「ナポレオン・ダイナマイト」だ。

日本では未公開のこの作品は監督もそれまで知られていない監督だった為、チキンな
配給会社が邦題制作の時点で当時日本でヒットしていた電車男をパロって「バス男」
という題名をつけたのだ。なんという浅ましさ。

これは映画史に残る大犯罪の一つだと僕は認識している

なぜならばこの「ナポレオン・ダイナマイト」はこれまでの映画史、コメディー史の
エポック・メーキング的作品だと僕は思っている。

オフ・ビートに徹底的に描かれるハズれた人間達。

主人公は徹底的なダメさ、ダサさを持った高校生。観ているこっちが苦笑し、恥ずかしく
なるような彼の振る舞いに鑑賞者の「やるせなさ」はどんどん高まってくる。

しかし、そこで起きる奇跡のようなエンディング。

僕は泣くところでは全くないのに流れる涙を止めることができなかった。

カッコ良すぎる。ジョン・ヘダ―。
生きる勇気を与えたくれる。

監督のジャレッド・ヘスは2作目ジャック・ブラック主演の
「ナチョ・リブレ 覆面の神様」でも同じような試みをしていて
レスラーに憧れるダメ男を描き、エンディングでは爽快な逆転劇で
独特のカタルシスを起こすことに成功している。

「ナポレオン・ダイナマイト」以降、ダメ人間とそのダメでシュール振る舞いに
焦点を当てた映画や、エンディングでそのダメ人間の逆転劇にてカタルシスを
起こそうとする映画が多く作られているが。
やはり、本作以上の感動を僕は得られていない。

その昔、
マルセル・デュシャンは「噴水」という題名のエレガントな作品を発表した。
それはただ便器を逆さに展示しただけのものだった。

そんなのが僕は好きです。
by interestingman | 2011-07-21 16:02
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