秘密基地
かつて僕は3つの秘密基地を我物にしていた。

いずれも自分の家の半径500メートル内に位置し、それぞれの
土地の現実的な所有者がいたにしても、近所に住む子供たちの間では
「あそこは2丁目のエージって奴がある程度管理している」
みたいな暗黙の了解のようなものがあった。

僕らはそれらの基地にゴミ捨て場や森から拾ってきたマンガやエロ本を
犬でいうマーキングみたいに置いて、放課後はそこに集まり、
キン肉マン消しゴムの交換会や、
マンガのヒーロー達の中で誰が一番強いかと討論をしたり、
ノストラダムスの新しい情報を聴きあったりと
今では何かと問題になりそうな昭和の不健全な子供の営みを謳歌していた。

最初の基地は僕の家の3件か4件となりのアパートの物置で
すでにアパートの住居者はいなかったと記憶してるが定かじゃない。
プラスティックの波板で作られたその物置きは5歳年上のT君から
譲り受けたもので代々の所有者?のエロ本や漫画で足の踏み場もなかった。

2つ目の基地は友達の家の物置小屋の上であった。
150㎝くらいの塀をよじ登ると、そこは200㎝平方くらいのトタン板の屋根の上で
物置きのとなりに立つ琵琶の木がうまい具合に屋根になりツリーハウスみたいで居心地は最高であった。
僕らはそこにおやつや漫画を持ち込んで、汚れた手で菓子をつかみ、汚れた顔でヘラヘラしていた。
友達の家だから侵入者もいないし、屋根の下では,気まぐれに落ちてくる菓子を狙って、飼い犬の
ウィスキーがウロウロしながら僕らの様子をうかがってた。
2週間くらいはそんな平和な日々が続いたが、あっけなく友達のお母さんから退去命令が下された。
当たり前である。

3つ目の基地は石材屋の置き場にあった倉庫、おそらく石材屋だったんではないか
と思われる。
なにしろ大きな石がゴロゴロとやたらあって、そこに2階建ての掘立小屋みたいなものがあった。
僕らの間ではその場所を「石山」と呼んでいた。

この基地は侵入者が多く、そもそも僕らの学区の外にあり、となりの小学校の悪童たちが
僕らの目を盗んでは侵入し荒らしたり、占領しようとした。そのグループとはかつてから
他の基地や公園の所有権、利用権をめぐり何かと抗争が多く、言わば犬猿の仲であった。
そしてそのグループとこの石山の基地をめぐりなかなかハードな抗争をしたことを覚えている。

そもそも、その場所はアチラのテリトリー(学区)内にあったし、比較的遊戯性の高い
(石から石へ飛び、走ったり、掘立小屋の1階と2階の正面は扉や壁がなく、ドリフの舞台セット
のようであった。)
場所であった為、彼らもある程度本気で挑んできていた。

罵声の飛ばしあいに始まり、誰かが爆竹に火を点けて投げたり、銀玉鉄砲で撃ち始めたりした。
そして、とうとうアチラ側から石が投げられてきた。

石を投げる行為は、言うまでもないがかなり危険性の高い行為であった。
学校の先生や親たちもこの問題に関しては真剣に注意をしていたし、子供たちの
間でもいさかいが起った時に石を投げるのはタブーであるという風潮があった。
しかし、その界隈で唯一、なんのお咎めもなく石を投げられるガキがアチラグループの
リーダー的存在のMであった。

僕はビビり始めた仲間を背に単身、彼らのもとへ歩んでいった。
Mも一人、こちら側に向かって歩いてきた。

僕はその界隈では「1番高い所から飛び降りれるヤツ」として知られていた。
実際、その石山の掘立小屋の2階部分から飛び降り、見ていた者を驚かせたことがあった。
その事実は噂としてその界隈の子供たちの間で語られた。

石山の前はかなり広い砂利の駐車場になっていて、水はけが悪いのか一年中あちらこちらに
水たまりがあった。西陽が水たまりに反射して、ゆらゆらとうごめく光を僕らに照らしていた。

僕もMも、ビシャビシャと水たまりを踏んでも、濡れる靴の事なんて気に掛けず、互いの顔を
じっと睨みつけながら歩みを進めていた。
Mの右手には石ころが握られていたが、僕は近づけば近づくほど、Mが僕に向かって石を投げにくく
なることは分かっていた。
所詮、奴が石を投げる行為も威嚇なのだ。外すはずもない位至近距離であれば、奴は投げない。
互いの距離が後10メートルにさしかかった時点で僕は不意に走った、
そしてその勢いでMの腹部に蹴りをいれたのだ。

Mは水たまりに尻もちをつき、右手から石を落した。
僕は英雄の西陽を浴びながら仲間のもとへ帰った。


そもそも、どうしてこんな長々と僕が秘密基地の記憶を綴っているのかというと
先日、久しぶりにスタイリストのHがやってきて、撮影の為にリースしてくれと
あれやこれやとワケの分からないジャンクを持って行ったのだ。
どういった内容の撮影であるか尋ねると、その内容は、
「湖の上に2階建てで木造の掘立小屋があり、そこで世離れして暮らす、病的なルーマニア青年」
だそうで、実際に古材を使って、筏の上に掘立小屋を作り、湖に浮かばせ、10枚のカットで
そのプロットを表現するらしく、なかなか面白い内容であった。

一方、僕も2,3カ月前からボチボチやっていたプロジェクトでアクセサリー作家アイちゃんの
ブランド「titti」の展示会のアートディレクション。
展示場の「made in COLKINIKHA」に少女の秘密基地を作りたいというアイちゃん
の願いで、先駆けてそのプロットに基づいたフライヤー制作をした。
木や布を使ってテントを作り、少女の秘密基地の部屋を作ったのだが、僕は多少、内股気味でそれを
愉しんだ。
いよいよ、今月の8日から展示会は始まる。
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by interestingman | 2010-10-06 12:13
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